JOURNEY

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この学年は例年に比べるとおとなしい学年だと漠然と思っていた。が、その認識を新たにしたのは、ゼミを始めてしばらく経ってからのことだった。ゼミ旅行の話が持ち上がり、あれよあれよという間に担当者が決まり、テキパキと段取りが進められた。
あれ、こんなにもチームワーク良かったっけ……。
結果、ゼミ旅行は交通、食事、宿泊、見学・鑑賞、観光、それに書店巡りと、最初から最後までスムーズかつ密度ありすぎの楽しい旅となった。
旅行中は驚きと喜びの連続だった。君たちの何気ない会話や行動の端々に、互いにリスペクトしあい、気遣っていることが窺い知れたからだ。
ああも言ったし、こうも言った。言葉を重ねすぎて迷わせたこともあっただろう。経験則を盾にした高飛車な発言、説明しきれず苦し紛れに話を曲げたこともあったはず。それでも君たちは僕の話を受け止めてくれた。一旦は。
一旦は、と書いたのは、話したことが次の授業で反映されているかというと、必ずしもそうではなかったからだ。ああでもない、こうでもないと思考を巡らせる。やがて膠着状態に陥り、その原因を探るべく螺旋の闇へと突入する。だからといって教員の意見をほどよく具体化させて、安易な着地点で手を打つなんてことはしない。
自分の目で見て、自分で思考し、自分で判断する。
この場は、その君たちの4年間の集成ともいえる場だ。そして今、僕はその場に立ち会おうとしている。

卒業おめでとう。
書店巡り、いつかまた一緒に。