卒業制作展を見ていると「失敗していても成功していても、卒業制作は見ていて気持ちが良い」と言っていた友人の言葉を思い出します。私を含め多くの人がそのように感じるのは、作品の完成度以上に、作者の思いとその可能性を感じ取るからかもしれません。もちろん、作品を制作する以上は成功した方がいいですし、その方が次に繋がりやすいと言えます。しかし、その成否に関わらず、自分の全てと可能性を作品に込めようとした痕跡が見えた時、本当の意味での完成を見たいと感じ、その試みを何かしらの形で続けて欲しいと思うのかもしれません。このことは、物を作ることにその世代の意識と作り手の歴史が内包されていると考えれば、決して特別なことではなく、物作りが根源的に持っている力だと言えます。なので卒業制作でも、自分の見つけたことと自分のやってきたことを素直に形にしてもらえれば、自然に自分達の世代としての可能性を持った自分の作品になると信じています。
最後に、皆さんの卒業制作展が、失敗したくないという気持ちや成功したい気持ちを超えて、物を作る感覚とそれを続けていく感覚を見つける機会になること、そして、それを体現した作品が集まった場になることを願っています。