北崎 允子
自然現象としてデザインを考察する
大学教員になって初めて「北崎ゼミ」を担当しました。十数名の若者と卒業制作を共にすることは、予想以上にとてつもない経験でした。なぜなら「デザインする」こととは、自然界に広がる豊饒で連続的な行為であり、決して「デザイン思考」や「記号論」などのように、一部を取り出して弁別し、構造化し、教えられるものではないからだと思うのです。そこには「学び」と「自己肯定」という不確実要素が関係すると思います。
ゼミではリサーチを通してさまざまな「学び」がありました。人々の知られざる価値観や習慣、暮らしなど、ことばにならないニュアンスを発見する。人々の本質的な反応や行動をプロトタイプを用いて見極める。史料から物事の成り立ちの物語を紡ぎ出す。これら「学び」が不確実なのは、もともと「あなた」が固有だからです。何を学び、何に感動し、何を伝えたいのか。それは「あなた」のこれまでの経験や、生まれ持った特性によって違うのです。かたちをつくる段階では、リサーチで得られた事をデザイン要件へと翻訳します。能動的に解釈をするのです。そこには自分自身への絶対的な肯定が必要で、「あなた」がどれだけ「あなた」を信じているかで解釈が異なるのです。
だから、ひとつとて同じデザインは生まれない。ひとつとて同じデザインプロセスはたどらない。それが「デザインする」という、古代から紡ぎ出されてきた究極の自然現象なのではないでしょうか。