海から湧きあがり、雨をたたきつけて山をくだり、河すじを流れるような。木立ちを揺らし谷のすきまを抜けて、雲を立ち上げときにはちぎり、この世をかきまわすような、風。
風土という言葉があります。土地を意味する土に、なぜ目に見えない風が組み合わさっているのかというと、その土地の地形に沿ってそこにしか吹かない風が生まれるから。その風が土地を削り、またさらに地形を削りだして独自の土地を創るからです。風土というのは私たちの在り方にしみ込んでいるアイデンティティに関わる重要な要素である、と言われる由縁です。風景という言葉もあります。こちらは光と関係が深くかなり視覚的です。眺めて味わうという、生物が光に対して感応する本能のようなものを感じます。
どちらも土地のアイデンティティに関わる意味の言葉で、それに風が組み合わさっているのが感慨深いです。なんともすごいのは、風というものが地球を巡って海を越え山を越え、かなり遠くからやってくる、しかも時期によって様相を変えるのにも関わらず、見えない存在だということです。そしてよそからやってくる風は、新しい種を運び、その種は新しい風土と風景、次の変化をいつの世にも創りだしてきました。私たちはいまもその真っただ中にいます。
次の場所を創りだす風になってほしい。どこに向かうにしても。私たちの星にはその存在がとても必要なのです。