寺山 祐策
低く伏して、高く翔べ
現時点で日本ではかなり収束の兆しが見えつつありますが皆さんは2年間にわたってコロナ禍の影響を受けた学年でした。制作時間など延長期間のあった昨年よりもその影響は深刻でした。
夏のゼミ旅行にも行けず、止むを得ず各人の旅をLINEに載せて共有しようということになりました。そこには目眩がするほど膨大な旅の風景が現れました。様々な制約の中、遠出あり近所の散歩あり、皆さんの青春の充実をそれらは語っていました。でも同時に私は一人、一人の孤独を強く感じていました。もちろん教室に集まって顔を合わせれば、とても仲の良い学年でしたが、うまく言えないが2年間のコロナ渦は一人一人をとても内省的にしたように思えるのです。直接的ではなくても卒業制作で選んだ君たちのテーマは旅と時間と場所を巡るもの、生と死に関すること、コミュニケーションと記憶・物語についてなどでした。
表現するということは、生きている時代と切り離せないものです。特に繊細なあなた方の魂が其々この時代と向き合った結果なのだと今の私は感じています。卒制展がお互いの長い心の旅の報告会となり、それらを改めて皆で共有することを楽しみにしています。