ちいさな空間
板橋 あすか
立体
齋藤ゼミ
8号館206A
小さな頃、私はトムとジェリーという映像作品を好んで見ていた。台詞がなくとも心境や盛り上がりの表現として見事に落とし込まれた音楽、幅の広いアニメーション的表現、わかりやすい世界観など様々な点で優れた映像作品であったが、私が特に好きなのはジェリーの家の絵面だった。マッチ棒で作られた家具、まち針でとめられたジェリーの服、ガラス片の鏡。これらは、擬人化されてはいるものの、ネズミという小さな生き物が人間の世界のものをうまく利用したらこうなるだろう、と認識させる。わざわざ大きなものを隣に並べずとも、勝手に「これは小さいものだから、これを使っている生き物も小さいはずだ」と思わせる素晴らしい表現。
私はミニチュア作品が好きだ。ミニチュア作品の中でも、小さな空間に入った小さなもの、『ちいさないきもの』が存在し、その中で生活していそうだと夢想できるものが特に好きだ。『ちいさないきもの』の生活を覗き込む興奮を表現するため、この作品をつくった。