願いと造形 ー郷土玩具から見える願いの形ー
大谷 真結子
本|立体
北崎ゼミ
9号館ゼロスペ―ス
日本には祈り、願うという行為と、そこから生まれた文化がたくさんある。そして、願いや想いの行き先には必ず形が存在している。「郷土玩具」も人々が願いや想いを込め、信仰の対象となった形の一つだ。郷土玩具というと、今では縁起がいいものとして正月や祝い事で目にすることが多く、いわゆる「日本の素朴でかわいい民芸品」という印象があるかもしれない。しかし、その可愛い見た目の裏側には、人々の暮らしから生まれた切実な願いや思い、呪術的なまじない要素が潜んでいる。
私は郷土玩具を「人々の願いや思いの形」であると考え、郷土玩具の当初の姿を振り返るとともに、多くの玩具が生まれた背景にある江戸時代の疫病や災害にまつわる願いと形の関係性を探ってきた。私の作品を通して、目には見えない人の願いや想いを視覚化し、形に対して願うという行為の奇妙さと面白さに気づいてくれたら嬉しい。ちなみに私の今の願いは、自分も含め、みんなの卒業制作が無事に終わることだ。
(図版:東京都立図書館TOKYOアーカイブ 歌川国芳『為朝と疱瘡神』)