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オルタナティブな文字を求めて ―君塚樹石とその時代―
小原 範均
グラフィックデザイン|タイプフェイス
白井ゼミ
8号館218
君塚樹石は戦前から戦後にかけて活躍した種字彫刻師である。大正3年、若干14才にして博文館で石渡栄太郎の弟子となると、若くして頭角を現し、精興社の白井赫太郎に見込まれ、オリジナルの本文活字を制作することを依頼される。それまでの二大潮流であった秀英型、築地型に変わる新しい活字を目的にその書体はつくられ、最初の五号明朝が昭和5年に完成した。
この精興社明朝の特異な点は、それまで作る人の少なかったオリジナルの本文明朝活字を制作したのみならず、その後、時代に合わせて異なる手法でその書体が改刻され続けたことにある。その都度、文字は姿を変え、現在でも多くの書籍で使われている。
君塚の書体制作の歴史を振り返り、その時代の手法によってどのように活字が変化したのか、書体改刻の背景を探った。また、現代の書体制作の方法で君塚の文字群を再現しなおすことで、今の時代の新たな解釈としてその造形を視覚的に還元することを試みる。