darning
川口 碧
本|ポスター|プロダクト
白井ゼミ
12号館地下展示室
私には首から胸元にわたる手術跡がある。長年コンプレックスだったが、時間の経過とともにこの跡は、共生していくお守りで、アイデンティティとして大切なものだと感じられるようになった。人は、誰もが大なり小なりコンプレックスを持っているのではないだろうか。
私にとってのコンプレックスが今では大切な物だと肯定できたように、誰かにとってもそんな存在になるものを作りたいと考えた。
お守りは、「祈願」という手順を踏んで私たちの手元に届く。一目一目編むという行為がその祈願につながるのではないかと考え、編み物で「身に着けられるお守り」を作った。装飾に使ったのは、擦り切れたり穴が開いたりした衣類を補修する修繕方法である。「綻び」や「穴」の部分(=コンプレックス)を補強して、「味」、「深み」に変えてくれる。着ていること、身に付けていることで自分を肯定し、守ってくれて、誰かに支えられていると感じられるような、そんな存在になる作品を目指した。