10歳の時アメリカに移住した私は、若かったため言語そのものの習得にはそれほど時間がかからなかった。しかし、なぜかコミュニケーションだけはそう簡単でなかった。お互い理解し合っていると感じていても、ニュアンスの違いが積み重なって話が噛み合わなくなったり、「夢をみた」ということを"I saw a dream..."と言って笑われたりもした。(正しくは I HAD a dream)当時はモヤモヤして苦しかったが、今となってはその経験が「ことば」の面白さや不思議さについて日々実感するきっかけになって良かったと感じる。ことばは不思議だ。同じことばでも、個人の経験、文化の違い、補足イメージの有無、文の構造などの様々な要因で解釈の仕方は180度変わる。このように、今回の作品では私が思うことばの面白さをしかけ絵本という形で制作した。伝わらないもどかしさを知っているからこそ、しかけ絵本という体験型の絵本にすることで、文章や絵だけでは伝わらないことばの本質を表現した。