菰印の印刷手法とその実践
後藤 杜彦
立体|グラフィックデザイン
中野ゼミ
8号館218
江戸時代、菱垣廻船で酒を運ぶ際、樽を保護するために巻かれ始めたわら菰。樽酒は銘柄の区別が必要となり、次第に菰には印や絵が描かれていった。こうして「菰印」は生まれた。
菰印は時代を経て、酒の識別という役割を超え、蔵元が商品ブランドを伸し上げるためのグラフィックデザインへと変容した。
菰は元来天然のわら菰が使用されるが、昭和30年代後半から化学繊維製の菰が流通するようになり、現在天然素材製の菰樽は極僅かである。また、印刷工程の効率化によって天然菰に手作業で菰印を刷る技術も失われた。
卒業制作では、シルクスクリーン印刷と転写技術が導入される以前に行われていた菰印の印刷手法を調査し、文献や証言を元にそれを実践した。
本展示では、その記録と矢野三蔵商店の協力の元に制作した天然菰樽を展示している。