生命のシルク—お蚕さまと私—
新根 日和
立体
石塚ゼミ
8号館206A
シルクに光沢が生まれる理由をご存知だろうか。それはシルクに三角形状の繊維が含まれていて、三角の断面がプリズム効果で光の屈折、分散を起こさせるためであり、私は蚕という生命がその繊維を紡いでいることに感動した。
そうしてシルクに関心を持った私は、養蚕場や製糸場を訪れたり、わずか3mmほどしかない生まれたての蚕が繭を作るところまで飼育したり、繭から糸をとったりしてきた。そのなかで私が感じたのは、蚕は常に「人にコントロールされている生命」だということ。人間が肉を食べるために牛や豚を育て、殺すのと同じように、蚕もまた人の生活のために育てられ、糸を紡ぎ、繭をつくり終えたら殺される。人間と蚕の関係は決して対等なものではない。
そんな経験を経て、あらためて光に照らされ輝く糸を眺めると、それはもう生命そのものだと思った。私は蚕が紡いでくれたその生命によって、人間が生きるためのものが創造されていることを伝えたい。