「ぼかし」に対する研究―像の退行的な生成の視点から読み解く―
ソウ ゴシン
映像|インスタレーション|論文
大学院
9号館211
視覚表現において、ぼかしは特殊な審美価値を持つ形式である。東洋でも西洋でも、異なる時期の芸術家はぼかしを活用して絵画表現を行っている。修士の2年間の研究では、パースの現象学と記号論に加えて、Max Benseの情報美学理論と向井周太郎の「degeneration」の観点から示唆を得た。その上で、視覚表現におけるぼかしの本質を探究・分析し、ぼかしは「像の退行的な生成」であるという結論を得た。さらに、美術史において最初にぼかしを用いた視覚表現の形式—禅宗水墨画を「状態」と「プロセス」の視点から分析した。ぼかしの中で、「退行」した要素は何か、それと同時に「生成」した新たな要素は何か、ということを探究した。 このようなぼかしの「退行的な生成」を観者が直感的に体験することができるために、卒業作品として、水墨画のぼかしをコンピュータでシミュレーションし、没入感のある映像装置を制作した。