マルチ映像における分割の記号的意味
―ポール・ドリエッセン作品の分析を中心に―
リュウ ショウコ
映像|本|グラフィックデザイン
大学院
9号館211
「マルチ映像」とは、一つの映像作品に複数の異なる画面またはスクリーンを使う形式のことである。学部時代、私は二つの画面から構成するアニメ『満ち欠け』を制作した。当時、多くの鑑賞者に作品後半の「現実と夢」を併置した部分を理解してもらえなかったことが私の研究のきっかけとなった。
展覧会、映画の電話シーン、テレビ中継など、マルチ映像は私たちの日常生活に多数存在している。今まで「マルチ映像」は環境映像、技術として語られることが多かったが、本研究が注目しているのはマルチ映像の叙事的な機能である。適切な視覚誘導があれば、マルチ映像はそれぞれの画面で物語を提示し、また画面と画面の位置関係によって新たなメッセージを提示することもできる。そして時間的モンタージュと平面的モンタージュが新たな意味性を織り出す。本研究では、マルチ映像の原点を辿りながら、ポール·ドリエッセンの作品を中心に記号分析と鑑賞特性に関する実験を行い、マルチ映像のさらなる可能性を探究する。