現在の社会情勢がそう思わせるのかもしれませんが、今年度は手でものを作ることの重要性を強く感じる一年でした。このことは卒業制作に対するゼミ生の姿勢を見ていても感じたことなので、皆さんはすでに体現できているのかもしれません。
私は「手でものを作る」と言う言葉は、手を使うという作業形式だけではなく、対象や素材に対して創造的に接している時の感覚も表していると考えています。なので、皆さんが卒業制作を通して行ってきた作るという行為は、作品を完成させるためのプロセスであるのはもちろん、自身と対象の中に潜む創造性を見つけた成果だと思っています。卒業してからの生活や仕事の中では、卒業制作でやっていたことを直接やり続ける機会はあまりないかもしれません。しかし、対象と自身の行為の中から創造性を見つけた経験、言い換えれば自分でものを作る感覚を見つけた経験は、一見デザインではないものの中から自分のデザインを見つける力になると信じています。そして、その様にして見つけたデザインは、たとえ形が異なっていても卒業制作の続きであり、ものを作ることの積み重ねになっていくのだと思っています。
最後に、皆さんの卒業制作と卒業制作展が、これからの創造の積み重ねの一歩になることと、それぞれのもの作りを確かめる場になることを願っています。
石塚 英樹
ISHIZUKA HIDEKI
色彩とコンピュータ