ゼミを受け持つようになって常に試されていると感じることがある。それは学生たちの力を最後まで信じるということ。全ての学年・授業において学生たちが見せてくれる成果には毎回驚かされ、その度に学生たちの力を信じて間違いなかったと思わせてくれるが、4年次という最終学年においてはさらに「自主性」が重要視される。より具体的に言えば、自ら問題を発見し、解決の方法を見つけ出し、造形へと展開し、それを自ら評価する力である。言い換えれば教員である私自身が学生たちの思考過程を注意深く観察し、その自主性を信じ切ることができるかどうかが常に試されているとも言えるだろう。ゼミが始まり、ぼんやりとしたテーマを具体化するために様々な模索を続けていく姿は、行き先を探しながら森を彷徨うかのようである。一歩進むたびに全身に飛び込んでくる膨大な情報に振り回され、自分が進むべき道はここだと確信しても中々先が見えないこともある。しかしそうした紆余曲折を経ていく経験そのものが、のちの大きな跳躍につながり、表現の原動力として自分自身の予想超えたものへと展開していく。今年度も「みんなを信じよう」、そう心に決めて1年間伴走してきたが、学生たちの試行錯誤の道のりは間違いなく創造性に溢れたものだった。それは自らを信じる力を育む過程であり、その成果として現れた卒業制作は学生たちにとっての未来の道標となるに違いない。
中野 豪雄
NAKANO TAKEO
グラフィックデザイン、ヴィジュアライゼーション
武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科
@2023 Musashino Art University Department of Visual Communication Design