今年も楽しいゼミの時間を過ごさせてもらった。学生諸君には心からの感謝を。さて、その楽しさとは何か。学生たちは毎年多様なテーマを展開する。そこに各人の個性というプリズムを通すことで無限とも言える驚くべき可能性が現れる。ゼミの時間はひとつの旅のようだ。対話を重ね、一緒に未知の事象に出会うことには楽しい旅的な感覚がある。またその時を通して表面ではなく、その人の過去をも包含した「ひととなり」が姿を現す瞬間を見ることがある。単語から文章へ。その人の文脈が見え出す。例えば船旅は港に着くまで旅を終えることができず大変だ。しかし安易に引き返せないことはその人を鍛える。旅をやり通すには勇気が必要だ。旅の中盤、その人が自分の本当のテーマを発見した時の嬉しさ。そしてテーマに対して徐々に真剣に、またあるときは深刻になっていく他ない時が来る。苦しいのだが本気と真剣で対象に向かうことは本質的なことで、倫理的な喜びがそこにはある。そして旅の後半にその人にとって何らかのブレークスルーの瞬間が来る。その人のいわば覚醒の瞬間に遭遇することはとても素敵なこと。それはいつも旅の後半の追い詰められたギリギリの時に起こる。
最後はいつの間にか一人一人がその人の色で輝いて見えるようになる。1年前には見えなかった光。多分私がゼミを楽しいと思っている理由はその光ゆえのものだ。
寺山 祐策
TERAYAMA YUSAKU
ヴィジュアルコミュニケーションデザイン、
視覚記号論