Illustration, Writing, Diagram8号館205教室

物語の視点

鈴木 万尋 寺山ゼミ

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物語の視点

鈴木 万尋 寺山ゼミ

中学生の時に読んだ江戸川乱歩の『芋虫』という作品は、私に強烈な印象を残し、何か小説について考えるたびに脳裏に浮かぶ。手足がない、耳が聞こえない、物が言えない『芋虫』と形容される男が、どんな世界で生き、何を考え、何をしたかったのか、思いを馳せずにはいられないのである。この小説で男のダイレクトな意思を示す文章は僅か6文である。それ以外は読者が想像するしかない。物語における、作者が意図的か削ぎ落とした物を拾い集める行為が「読む」ことだと思う。男がどんな視点で何を見て生きてきたのか、文章から推察し視覚化していく。それをその妻、上司、医者と他の登場人物に拡張していく。登場人物同士の関係性が見えてくる。それぞれの視点の違いが見えてくる。そういった拾い集めた物語の要素を、整理し、配置し、見比べられるようにする……かつての自分がなぜこの小説を面白いと思ったのか、物語に改めて正面から向き合うことでわかるのではないかと制作を始めた。

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