Book design, Writing, Chronology9号館地下展示室

地図に映る想像と現実

王 藝霏 大学院

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地図に映る想像と現実

王 藝霏 大学院

「地図」というものは、一般的に固定された空間情報の提供手段として捉えられがちであるが、実際には空間認識を超えた深い文化的・象徴的な意味が含まれている。私が研究対象とする『三才図会』は、単なる地理的情報の集積を超え、明代の人々が抱いた自然観、他者認識、さらには権力構造が複雑に織り交ぜられた視覚的な世界観の集大成であるといえる。本書は、物理的な空間を超越し、文化的価値観や時代の精神を映し出す鏡として機能した。

『三才図会』の風景地図には、現実の地形とともに理想郷を象徴する仙山が描かれ、これは文人の精神的な憩いの場としての役割を果たしていた。このような地図は単なる風景描写にとどまらず、文化的な理想や精神の探求を視覚的に具現化したものである。また、明代の海防意識や内外の区別も地図表現に刻まれている。例えば、「海上陸下」の配置は、内地の文明と外部の「蛮夷」との対立を際立たせ、異文化に対する当時の独自の認識を反映している。さらに、『三才図会』の世界地図においては、当時の中国が「世界の中心」として強調され、他国が「食人国」や「狗国」として描写されている。これにより、異文化は「他者化」され、文化的優越感が暗示されている。

本研究は、このような象徴を通じて『三才図会』が描き出す多層的な世界観を読み解き、地図が時代の空間的、文化的、社会的認識をどのように反映した象徴的メディアであったかを明らかにすることを目的としている。

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