女手(平仮名)は動態的な姿が潜んでいると思う。つまり、直線が一本もなく、対称形も一つもない。左右対称のものもない。(直線や対称形や左右対象というものを含め、全て存在しない)。曲線によって構成されているということである。曲線間の組み合わせもかなり特殊であり、主に「連綿連続」「線を伸ばす」「傾ける」「歪み」などで書かれ、筆順間には一つの十文交差線もない、「結び」「回転状」で曖昧に構成される。この動態的な姿は一体どうやって生まれたのかに関心を持ち、女手(平仮名)を書かれた書家とその時代を遡り、研究を行った。(改行)本研究では、初代女手(平仮名)『高野切』と『古今和歌集』を研究対象とし、書と書き方と書く意識を探究している。また、身体性、構成学と現象学の視点を踏まえ、新たな作品を通して女手の動態的な姿を再現している。
(主査:白井敬尚/副査:中野豪雄)