in action

感情依存記憶

聞き手からの物語の再構築

フ ウソウ

ダイアグラム
9号館 211

 随分昔に起きたことはほとんど詳しい経緯をよく覚えていないにもかかわらず、当時の気持ちははっきりと覚えている。ドラマや映画に関しても同じ現象が起きる。見終えて数か月後、記憶が曖昧になってしまう。展開を間違えることもあるが、当時体感したインパクトや感情ははっきりと再現できる。このような現象が起きるのは、具体的な事件よりも、感情のほうが印象に残っているからだと言えるのではないか?
機械的記憶と違って、人間の記憶は主観的・ダイナミックなものであり、間違いが生じることも多い。しかし事実と完璧に合致しないからこそ、物語は面白くなる。このような多様性と豊富性も人間の記憶の魅力だと言える。私たちの体は情報の摂取と伝達という二つの機能があるため、「受けるー記銘ー保持ー想起ー伝える」という過程で物語が解釈され、翻訳される。あるストーリーを記憶として脳にインプットする時、様々な感情が絡み合って、アイデンティティによって様々な「歪み」を生み出し、主観的なストーリーが再構築されると想定できる。その時、ストーリーはまさに、人々の独自の物語になるとも言えよう。
 本研究では、上述の過程を踏まえて、物語の伝え方を考案する。つまり、同じストーリーに対して、人々が各自の主観的感情に基づいて、多様な記憶を表現する方法のことである。本卒業製作では、受験者の表情や姿を観察し、感情の変化を分析する実験を行う。一定の記憶の材料に対して、人々の感情が記憶にどのような影響を与えたか、その実験データを可視化することを通じて、聞き手からの物語の再構築を試みる。
(主査:北崎允子)

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