in action

愛情の形と幸せの価値

幸福の国

天野 晴香

漫画、イラストレーション
8号館 204

卒業制作を始める少し前から、私は日本の結婚制度についてしばしば考えている事があった。それは、「何故結婚してパートナーになる相手が異性でなければならないのか」という事と、「何故結婚相手は性関係や恋愛感情を前提とした相手であるのが普通かのようになっているのか」という事である。結婚する事がステータスのようにされる風潮があることから、日本における「結婚」というワードは未だそれなりに重い意味を持っているように感じる。しかし、実際に結婚して家族になることができるのは男女の二性間のみである。こういった結婚制度の形は人々に社会的格差を生むだけでなく、愛情の優劣(例えば友愛感情よりも、恋愛感情が重く尊いとされがちなど)を生んでいるのではないかと私は感じていた。そこで卒業制作の機会に自分が感じているモヤモヤや疑問と向き合いながら作品を作っていこうと思ったのが、今回の作品を制作するにいたったきっかけである。
そこから結婚の起源や歴史、そもそも人間の性別はどうやって判断されているのかなどを調べていった。その中で自分にとって何よりも大きな発見になったのが、人間の性別についての調査である。医学的に見る人間の性分化の過程であったり、性自認、性的指向、性表現などの精神的性についても調べた結果、人間の性別は「男女」と簡単に2つに分けられないほど複雑で、多種多様である事を知った。さらに調査をしていくにつれ、人間の性別やその振る舞い方、愛情の形やそれを向ける対象は人によって本当にさまざまで、それを人に決められたり、ましてや自分が誰かに強制するような事はあってはならないのだと考えるようになった。
今回制作した漫画作品は、ストーリーに直接は関係しないものの作品の根底には調査の中で自分が考えた事や気付いた事を込めたつもりだ。物語を通して、人それぞれの生き方があり愛情の形があり、それらに優劣はないと言うことを表現したいと思う。

作品一覧に戻る