人間は生まれて死ぬまでの人生の3分の1を枕の上で過ごしている。
その事実を知っている人の中では「時間がもったいない!」と思う方もいるかもしれないが、私はその時間を生かしてみればどうだろうと思いはじめた。その考えをきっかけとして私は中学時代の1年の時から夢日記を書き始めた。
内容を振り替えてみると、私は人間ではない生き物になり、時間を過ごす夢を頻繁に見る。カラスになり水浴びをしたり、猫になり自由に街を出歩くなど人間としては経験できないことばかりだった。
だが夢から目覚める瞬間、夢の世界では当たり前な事だったはずの感覚(動物の逆関節の感じなど)が異質的な感覚になって私を襲ってくる。その感覚だけモザイクされた画像のようにぼやけてはっきりしていないのだ。自分はこの消された感覚の理由を解明したいと思い、卒業制作としての主題をこの「夢日記」としてリサーチに取り組むことになった。
「夢」と言うのは人それぞれの無意識である。
自分が一生を送りながら経験した事(観て、感じて、聴いたことなど)のみが意識の底で再編集されて作られる短編映画のようなものだ。自分がまだ未経験した事を行おうとするとその形状に該当する感覚が入れ替わって感じられたり、データ不足で夢から目覚めることになってしまう。つまり、夢の中だと言っても完全なる自由は得られない事実に私は気づいた。
私は「夢の中では誰でも自由になれる」と言う常識を砕いた衝撃を受けると同時に、夢の中の私を決められたことしかできない、くるくる回るだけの、まるでからくり人形のようだと感じた。その事をきっかけとして自分の夢の世界を再現するカラクリを作り始めたものがこの作品である。