in action

円環と流転

日本的時間の探求

種村 すぎ菜

ブックデザイン、写真、文章
10号館 311

日本に流れる時間が好きだ。 私は幼少期から、目の前に竹林が広がる家で、自然の四季に親しみながら育った。そのため、土の匂いが薄い東京で暮らしていても、ふと自然が恋しくなる瞬間がある。春に桜を見れば、来年も同じ美しい桜が見たいと思うし、秋に紅葉を見れば、来年も同じ美しい紅葉が見たいと思う。 日本における四季の循環と移ろいの美しさは、そのまま日本に流れる時間を表現していると私は思う。そう仮定したとき、日本的な時の捉え方は「円環と流転」にその本質があるのではないだろうか。 私の卒業制作は、日本文化に対する強い関心から始まった。茶席菓子の練りきりや文明開化以前の天文暦学に触れる中で、均質化された現代の時間の捉え方に疑問を抱くと同時に、日本人が生きてきた時間の豊かさに魅了された。以降、古今東西の時間論や禅などの東洋哲学に触れて思索を深めた結果、日本文化に根付いた時間感覚は「円環:くりかえすこと」と「流転:かわること」の2つに核心があると発見した。 書物のページをめくる行為は、時間の経過と重なる。練りきりを初めとする、私がこれまで収集してきたイメージと分類を組み合わせて日本文化の時間表象を編集し、日本的な時の美しさを伝える書物として可視化した。 2020年は、多くの人に「自分の時間」が生まれた年だった。日本という「今ここ」には、どんな時間が流れているか、流れてきたか。この作品が、自らの過ごす時間を見つめ直すきっかけになれば幸いである。

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