in action

本における支持体と形態の関係性について

森谷 真琴

ブックデザイン、インスタレーション
8号館 210

私は小さい頃から絵を描くことよりも本を読むことが好きだった。 中学生のときに自分の将来を考えた際、自然と本に関わる仕事に就きたいと思い、この大学に来た。 しかしあるときふと、本ってなんだろう?と思った。製本された宿泊者名簿や帳簿は本?コピー用紙に書かれた小説は?全てものに「これは本」「これは本ではない」と境界線を引く必要はないのかもしれない。しかし、世の中にはたくさんの本があり、たくさんの人が本とともに過ごしている。 イタリアの人文学者、ペトラルカは書物を”喜ばしく常にそばにいる仲間である”と言っていた。私も常に本に囲まれて過ごしている。 どうして私はここまで本に惹かれるのか。私がこんなにも心を惹かれる本とはいったいなんなのか。 そんな些細な疑問がこの卒業制作の出発点となり、粘土板から竹簡、和本や洋本へと現在までの本の歴史を遡って多くの知識を得て自分なりの定義づけをした。 その過程において、竹を割って竹簡を制作したり、和紙の制作体験を通して本の支持体としての素材の成り立ちを体験しながら進めていった。 そして今回の展示では、和紙をはじめとした紙を中心としながら、本の支持体と、そこから成り立つ本がどのような形となっているのか。また、これまでどういう過程を経てこのような形となったのか、ということを竹簡から巻子本、折本を通して支持体と形態の関係性を歴史や製造方法を解説しながら展示している。 本の歴史や成り立ち、支持体との関係性に触れ、あなたの周りにもたくさんあるであろう本というものについて、思いを巡らすきっかけとなれば嬉しい。

作品一覧に戻る