in action

Visual Ambiguity

大野 真里衣

インスタレーション、プログラミング
10号館 308

我々は己の視覚を疑わずに生活している。
しかし我々の見る視覚世界はともすれば非常に曖昧だ。人間はときに「ない」ものを「ある」ように見たり、「ある」ものを「ない」ように見る。
そういった視覚のゆらぎを、J・ギブソン「アフォーダンス」の理論を用いながら体感させることを試みた。

正面から覗き込むと一見ただの穴のようにもトンネルのようにも見えるこの作品は、円形にくり抜かれた何枚ものプラスチック板を等間隔に並べ、さらにそこに当たる光を制御することよって作られている。
プラスチック板の形や距離感を判断するための視覚情報—ギブソンは「肌目」と表現している—は変化させることなく、板の間を満たしている空気、光、そういった「媒質」の変化によって目で見る距離感を混乱させる。プラスチック板に当たる光の変化に伴い、鑑賞者の前にないはずの板間の壁が出現し、また霧散していく。己の視覚世界が揺らいだとき、鑑賞者は「見る」ということについて再考することになるだろう。

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