in action

Myジレン•マウンテン

ー山口県民のジレンマを解く手がかりー

河畑 花恋

ブランディング、コミュニケーションデザイン、映像
8号館 210

「山口県ってどこだっけ…」「遠いから行きたくない…」美術大学という、自分の興味に対しては強い関心を持つ集団の中で、特に東日本出身の学生が山口県を含む西日本のことをあまり知らないことを知った。次第に私も、相手が山口のことを知らなくても面白おかしく聞こえるように話さなくては、と無意識に卑下して話すようになっていった。
大学4年次の6月にゼミで出身県を紹介した際、私に対し友人が「山口のことが嫌いなのかと思ったら、好きなんだね」と言った。私のこれまでの語り口は、悪口と思われるほど毒舌になってしまっていたということにショックを受けた。地元に対する感情は愛だと思っていたが、愛し方も紹介の仕方もdisを交ぜる、所謂面倒臭い彼女が抱きがちな愛憎へと進化していたと、この時初めて気がついた。
同郷の友人の多くが、私と同じ葛藤や劣等感を感じているという自信があった。少子高齢化、娯楽施設等の減少、排他的な部分などの、現状は解決不可能な課題があると解っていつつ、それでも山口に残っている自然の豊かさや人の温もり、愛情や懐かしさをとても好ましく思っている。このような「嫌いじゃないけど好きじゃない」という、もどかしいどっちつかずの気持ちを『山口県民のジレンマ』と称し、20代から70代までの山口県出身者15名に対し1〜3時間半のインタビューを実施した。各々から、共通した/種類の異なる「山口を懐う性格」があることを発見した。当制作では、その性格を当てはめたキャラクターたちが、山口をテーマにした作品内で対話し、インタビューで得た考えを投影する。鑑賞する山口県出身者に対し、「ジレンマを抱えているのは自分だけではなく、その中にも様々な考え方の人が存在する」ということを意識させ、他地方出身者にも自分の地元に対する思いを再確認してもらうことを目的として、映像作品やキャラクターの制作を行った。
本作品は、そのキャラクターたちの織りなす会話やインタビューで伺った体験に基づいた漫画、インタビューの映像、インタビュー抜粋文、方言で案内するカーナビとその利用した映像などのマルチメディアを用いて、仮想のブランドの立ち上げを想定し展示を行っている。

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