いつだか、古本屋でなんとなく手に取った江戸川乱歩傑作選を読んだときの衝撃と歓びを今でも覚えている。中でも「パノラマ島綺譚」の奇妙でありながら魅力的な世界は自分を大いに魅了した。 フィクションとノンフィクションの境界をゆく絶妙なトリック、ヒトの手によって整えられた動植物、そこに渦巻く人間の喜怒哀楽。様々な美を内包した歪な島を、自分はこの目で見たいと思い、この大きなパネルに絵を描いた。さながら、ひとつの島をキャンバス として理想郷を築き上げた主人公、人見のように。