正月に、久しぶりに凧揚げをした。すぐに飽きるだろうと高を括っていたのだが、始めてみると時間を忘れて、空とそれを背景に漂う凧を、ぼーっと見上げていた。自分の中のどこにも属さない不思議な感覚だった。そして、風に恵まれ、凧が浮かび、みるみる高く上昇していく高揚と爽快は格別であった。
私がおこなったのは「遊戯的凧揚げ」だ。しかし凧は古代から、漁具や戦具、神具や玩具など様々な目的で使われていた。歴史や現在も行われる凧揚げ行事について調べると、日本には「儀式的凧揚げ」があることがわかった。今回の卒業制作では、凧の歴史、日本全国の分布やその造形の奇天烈さに好奇心を刺激されつつ、凧揚げの不思議な感覚から、人はなぜ凧を揚げるのかという根本的な疑問のもと、調査を進め、一冊の本にまとめた。