どんな物にも、記憶が内包されている。記念日に行ったこと、家族との会話、趣味に対する熱い想い、…大切ことから何気ないことまで、内容は多岐にわたる。それらの記憶を思い出す手段として、人は物を側に置いている。忘れたくないと無意識に感じるほど大切なものは何なのか、何に価値を感じているのかが、その人を取り囲む物に顕著に現れる。
私の卒業制作のテーマは価値観だ。私はこの一年、身の回りにある物の絵を描き、それに対する私の想いを綴った。値段やレビューを調べ、一般的な評価を初めて知った。多くのものが私以外にとって大した価値がない物で、なんだか切なくなる一方、自分がどこに価値を置いているのかを知るきっかけとなった。
他人同士で互いの価値観を完全に理解し合うことは不可能だろうが、「価値観に基づいた選択をした時の心の動き」に共感することはできるはずだ。あなたが私の想いに共感したとき、忘れていた記憶が蘇ってくるだろう。その記憶を懐かしんで、あるいは思い出話に花を咲かせて、見た人にほっこりしてもらうのが本制作物の目的である。