in action

対面授業が再開した9月、ゼミの教室を訪れるとこれまで数ヶ月間に渡りオンラインで対話していた学生たちの姿があった。目を合わせたときに思わずこぼれた笑み。その光景は今でも強く印象に残っている。「やっとゼミが始まった」——すでに半期を終えた時点であるにも関わらず、そんな想いが詰まった表情だった。
視デは4年間を通じて“直接的経験”を重視している。人と出会うこと、物に指先が触れること、誰かと同じ時間を共有すること。そこで感じる言い尽くせないものごとに敏感に反応し、思考し、解釈を重ねていくことをずっと求めてきたし、それはデザインという行為を支える普遍の原理と言えるだろう。だからこそ学生たちは知らずうちに直接会うことによって豊かなデザインをめぐる対話が可能になることを瞬間的に、素直に感じたのだと思う。
改めて私たちを取り巻く“世界”は複雑だと思う。卒業制作はそんな不確かで掴みどころのない“世界”をどのように見ているのかを自ら問い、デザインによって提示する機会である。そこでは地道な探索と、様々な決断が求められる。膨大な試行錯誤の積み重ねが、デザインのメッセージとして形になっていく。
このプロセスの源になるものは、素朴な気づき(世界への反応)である。未曾有の事態に直面しながらも自らの視点に向き合い、求め続けたそれぞれの“反応のカタチ”は、これからの社会を生きていく上で重要な意味を持つはずだ。この経験を得た学生たちの未来が素晴らしいものであることを確信している。

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