JOURNEY

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私が学生だった時、友人が自分のやってきたことをプリントにまとめ、クラスの全員に配付したことがありました。クラスメイトにレジュメを配ることは、今では珍しくありませんが、当時の私にとっては、とても印象に残った出来事でした。全員に配られた一枚のプリントが、授業を先生と学生の空間から、学生同士の空間に変え、先生を含めた全員が各自のテーマを持ちながらも、お互いに共通した問題に取り組んでいる印象を持ったのを覚えています。当時はコンピュータがデザインの分野に広く普及し始めていた時期だったので、未知の道具であるコンピュータについて、先生や学生に関係なく全員が考えざるを得ない、または使わざるを得ない状況だったことが、その印象をより強くしたのかもしれません。そして、いま思えば、その時に感じた各人が別々なことをやりながらも、共通したテーマを持った空間の印象が、その後の自分の制作や物を作る場所の選択に大きく影響していたように感じます。
皆さんの世代としての経験や制作過程での出来事が、知らず知らずのうちに、自分の行き場所の選択に影響を与えていることがあると思います。自分が何処に行くかは作品以上に正解のないことだと言えますが、卒業制作では自分の視点を追究することに加え、大学という場所での出来事や出会いから立ち上がる“物を作る感覚”を大切にしてほしいと思っています。それは、これから自分の行く場所が本当に正しいかは分からないにしても、その場所に対して自分が創造的に接しられているかの基準になると思うからです。そして、視覚伝達デザイン学科を卒業する皆さんなら、どのような状況であっても、自分なりの物作りの感覚を持った場所を見つけることが出来ると思っています。
最後に皆さんの卒業制作展が、自らの視点を突き詰めながらも、互いの問題を共有できる場所になることを願っています。