【視覚表現の創造へ】
視覚伝達デザイン学科では、現代社会、そして 21世紀に対応する創造活動を通して、ヴィジュアル・コミュニケーション・デザインの分野にたずさわる人材を育成している。
このような時代に求められるのは、社会的な視点から情報の意味を捉え直し、再構築することができる知性と教養を備え、同時に、人々の感性に共鳴する新たな視覚表現の創造者としての高度な技術と美意識を持った能力である。そのような、真の意味において新しい時代のヴィジュアル・コミュニケーション・デザインを担いうる人材の育成こそが本学科の目的である。
デザインをおこなうには、われわれの五感の全てを使い、特に視覚の面からメッセージの構築とコミュニケーションを考え、イメージを喚起する技術と教養を身につける必要がある。その技術と創造は、人々の感性に訴える詩的表現を伴っており、美意識に関わるものである。ヴィジュアル・コミュニケーション・デザインの学習範囲は、美学、心理学、人間工学、サイバネティックス、環境生態学のような基礎的研究やコミュニケーション理論等の社会学など学際的分野が含まれている。そして、その主要な専門領域は印刷、写真、映像、マルチメディア、インターネット、視覚環境などの実際の技術と理論である。
このような変革の時代、ヴィジュアル・コミュニケーション・デザインの領域で活動しようとすれば、狭義のグラフィックテザインにおける技術や表現だけでなく、多様なメディアに対する知識、それを使いこなす技術や感性、新しいイメージを生み出す創造力が要求される。
視覚伝達デザイン学科では、こうしたポストモダン・デザインの環境変化に対応するために、学科改革のための共同研究会の設置、1980年以後に世界のデザイン領域に起こっている変革の調査、国内国外のデザイン教育機関のデータベース作成、アメリカの12 箇所におよぶデザイン系大学とデザイン研究所の視察などの同時並行して、ここ数年にわたって教育改革を推し進めてきた。
さらに今後の多様なデザインの変革を予知し、革新的なメディアのなかで多彩な個性を開花させる試みがおこなわれているが、1992年から4年間にわたるカリキュラム改革の取組の過程は、現時点で我々の認識の指針と実践の答えを出すことを求められている。
「変革をもたらすもの、そして変化しない基盤とは何か。デザインの専門領域とは、学際領域の境を超えて存在するものは何か」等であった。