[授業概要]
「カラーアトラス・色彩図鑑」を完成させることが授業の最終目的になる。この課題は、身の周りに潜む様々な色彩を、自身の方法と技法によって記録し、紙上に再構築する試みと言える。その制作プロセスには、色を題材とした造形の問題、色がどのように見えるかを題材とした知覚の問題、見えているものが何を表しているかを題材とした意味の問題がある。そして、これらの問題を統合し、紙というメディアによって見て触れられる作品にすることが、本授業におけるヴィジュアルコミュニケーションデザインの課題と言える。
授業では、表現形式から作品を考えるのではなく、制作プロセスから表現形式と作品形態を考えていくので、チャートや色見本的な表現はもちろん、色彩を利用した視覚的なストーリー、絵、地図、ダイアグラムなどの表現も射程に入れている。作品を制作するにあたっては、色そのものをモチーフにしても、具体的な物や現象をモチーフにしても良いが、モチーフと徹底的に向き合うことで、色彩に対する自身の考えと制作プロセスを構築することを重視する。自ら体験、観察、記録、制作することから色彩に対する考え、言い換えれば作品のアイディアを探していき、紙の作品として完成させていく。作品は本、立体、平面などが考えられるが、紙を重ねること、並べること、紙とのインタラクションを考えることから作品の形態を探していく。
「カラーアトラス・色彩図鑑」を作品として完成させるには、色を見定める眼と、コントロールする手と、それを分析する思考が必要になってくる。色を見定め、コントロールする力をより豊かにするためには、手作業によるスタディが欠かせない。このため授業では「カラーアトラス・色彩図鑑」の制作と並行して、絵具による色のスタディとプログラムによる造形のスタディを行う。またプログラムは、より原理的な思考から制作する必要があるため、コンピュータ・モニターにとっての手作業(思考)と位置づけている。絵具によるスタディとプログラムによるスタディを通して、眼と手と思考を連動させ作品制作より豊かにしていく。
継続的なスタディを通して色の微妙な違いを見極め、自らの基準によってコントロール出来るようになることは、日常での小さな発見を作品として完成させるための大きな力になると考えている。
[形態 – 種別] 実技 – 選択授業