[形態 – 種別] 実技 – 選択必修授業
[授業概要]
○「情報デザイン」とは何だろう
現在あらゆるデザイン領域は、コンピュータとインターネットなどの情報通信技術(IT)が深く関わっています。
「情報デザイン」はコンピュータ、ソフトウェア、マルチメディア、インターネット、モバイル通信などの出現によって生まれた社会をより良くするための、包括的なデザインの領域と思想です。
1990年代から2000年代初頭までに起きたIT革命は、単にデザインの技術・方法・表現を変革しただけでなく、デザインとは何か、コニュニケーションとは何かという根源的な問い直しを求めているのです。
そこには旧来よりもはるかに統合的なデザインの可能性と、国際的なデザインとの繋がりが開かれています。
情報デザインは、人間が情報社会で協同して行動するために必要な人間・社会システム、情報、表象(記号)、出来事、環境、情報ネットワークなどとの間のインタラクティブな活動プロセスのデザインに関わっています。
情報デザインの認識と技術は、次の6つの基本的なプロセスから組み立てられています。
① 認知プロセス
人間は、出来事、環境、表象、システムなどとのインタラクティブな相互作用をとおして生きる活動を形成している。情報デザインは、人間の行動とコミュニケーションを組織している認知プロセスに基づいてデザインを考える。
② ヒューマン・インターフェイス(HI)
人間はデジタルな情報環境の中で活動するために、コンピュータや仮想現実などの諸メディア(HI)を媒介にして現実世界やサイバースペースとの対話をおこなう。
③ インタラクティブ・ビジュアライゼーション
常に変化し続ける人間活動とシンクロナイズ(同調)して機能するためのメディアの表示・表現形態は、動的でマルチ感覚をもったビジュアル・システムが求められる。
④ ネットワーク・コミュニケーション
個人が世界に情報を発信することができるインターネットは、広域の人や情報を結びつけて協同活動を助け、情報コミュニティ(情報共同体)をつくる。
⑤ 情報のルール、アルゴリズム
情報プロセスは、情報世界に固有の言語と秩序で形成されている。情報の内容やシステムは、デジタル特有の手続きから組み立てられている。
⑥ 情報デザインの社会性と理念
現代社会が直面している情報環境や地球環境の諸問題を、生活と社会のなかでデザイン活動をとおして解決するための、新しいデザインの方向と考え方が必要とされている。デザイナーは個性と創造性を生かして、どのように社会に参加できるかを考えなければならない。
○前期・後期の授業の進め方
まずユーザーの利用実験の基礎から始め、段階的に設定された課題の実習をとおして、情報デザインの諸問題を考えていく。その中で、情報の特質と人間の認知の関わり合いを系統的に理解し、情報デザインの具体的な制作へ応用することを修得する。
○学習のプログラム
先ず、「デザインは、人々や生活、社会、情報、環境などの様々な要求、要素、機能、技術、表現を統合し、全体として実際的な目的や価値の創造を達成する統合的で社会的な活動である」というデザイン本来の目的を認識し実践することが最も重要です。
この授業のプログラムは、情報システムとネットワークを企画し構築する、4つの側面の学習を含んでいます。
(1)統合的なデザイン演習(方法と制作と実際)
統合デザイン演習は、デザイン活動の全体性と統合性(行動の目的性と統合性と価値の創造)を学習する最も重要なプロセスです。この演習では、社会的目的をもった情報システム(例えば、共同活動を支援する情報システム)を制作し、情報分析、問題発見、コンセプトと企画、システム設計と制作、インタラクション・デザイン、シミュレーション、ユーザーテストなど、情報デザインの統合能力と方法論を実際におこなってみて学習するのがねらいです。
(2)インタラクティブ・デザインの情報要素と技術の実習(要素と技術)
デジタルメディアを、実際にデザイン・制作するために必要な、情報デザインの領域に特有のリテラシーと技術の学習です。例えば、ナビゲーション、動的情報構成、ソフトウェア言語、3D-CG、データベースなどなど。
(3)情報と社会・歴史認識の深化(背景と知識)
情報とは何か。人々は情報をどう扱ってきたか。メディアの発展の歴史を辿り、情報の視覚化の多様性について認識を深める。
(4)プレゼンテーションと情報発信
情報デザインの学習作業プロセスは、インターネット上で行われます。学内外に向けてプレゼンテーション、情報発信、交流をおこないます。
関連サイト
「VCD情報デザインをめぐって」